給料と貯金の違いか」と思ったかもしれません
一方、必要な支払いを済ませても、まだ余裕がある場合には、多くの人は貯金していると思います。フローの中で消費に回らずに蓄積されたものを、ストックと呼びます。日々の生活の中で出入りしているお金がフロー。貯まったお金がストックです。フローは常に動いていますが、ストックは動きません。
純金融資産とは、預貯金や株式、債券や生命保険などの金融資産から、負債を差し引いたものです。例えば、総資産が1億円だったとしても、負債が100万円あれば富裕層には区分されません。
「富裕層」と聞くと、お金持ちというイメージがありますが、実際にどういった方を富裕層と呼ぶのかご存じでしょうか。貯金がたくさんある、年収が数千万円、不動産などの資産を多く持っているなど、なんとなくイメージできるけれど、詳しくは分からないという方も少なくありません。
貯金が1億円あれば、3%で運用したと仮定すると、そこからの年収は300万円になります。300万円では贅沢はできませんが、生活できない金額ではありません。言い換えれば、1億円のストックがあれば、働かなくても毎年300万円をゲットし、生活ができるのです。富裕層の人はよく、「お金に働いてもらう」という表現をします。まさに、このようなことを指しています。
65歳まで働いたとしても、65歳以降、月に14万円不足します。仮に5,000万円貯金があったとして、これを取り崩して生活しますと、30年近く生活できます。
【FP解説】「貯金1,000万円」実現できる人の「節約・運用」の違いとは?
世の中には年収が1000万円以上もありながら、貯金がほとんどなく、常に自転車操業という人が少なくありません。まさにフロー重視型の典型といえます。お金をいくら稼いでいても、その分だけ使ってしまっては、いつまでも働き続けなければいけない悪循環から逃れられません。
「なあんだ。給料と貯金の違いか」と思ったかもしれません。確かにその通りなのですが、お金というものをフロー中心で見るのか、ストック中心で見るのかで、世界はまるで違ってきます。そして、お金に縁のある「教養人」は、徹底してストックを重視するのです。
その理由は、貯金が多いと、イザという時の備えになるといった意味にとどまりません。まとまったお金があると、それを株式や不動産で運用することによって、収益を得ることができるからです。働いて得られる収入だけでなく、運用で得られる収入がプラスされてくるのです。
「(夫婦の)貯蓄(預貯金、信託、債権、株式、保険など)の総額は、およそどれくらいになるか」尋ねてみると、総数では「100万円未満」が 10.4%、「1,000万円~2,000万円未満」が 8.4%、「700万円~1,000万円未満」が 5.9%、「500万円~700万円未満」が5.7%などの順となっている。なお、「貯蓄はない」が12.2%、「わからない」が27.1%となっている。
もし、この人にストックを増やすという感覚があれば、多くのお金を貯金して、それを運用に回していたでしょう。老後を迎える頃には、運用資金だけで余裕ある生活ができるようになっていたかもしれません。残念ながら、ストック中心に考えるというお金の教養がなかったがために、この人の生活はずっと「自転車操業」になってしまうわけです。